株式会社 立石食品 代表取締役 立石一則 氏

掲載号:2009年4月号

「もう一度 自分に言い聞かせながら」薩摩伝統の味 さつまあげ一筋に

鹿児島にあるさつま揚げ専門店「揚立屋」。県内に8店舗を展開し、インターネット販売も行っている。店内には各店舗限定商品や季節限定商品などが並び、購買客が飽きない店作りが工夫されている。また、時節柄「食の安心・安全」は気になるところだが、保存料・酸化防止剤を使わずに、徹底した品質管理でもの作りを行うことにこだわっている。この「揚立屋」を運営するのが立石食品だ。 本号では株式会社立石食品の代表取締役であり、(当時)南九州産業団地協同組合の代表理事でもある立石一則さんにお話いただいた。

立石食品のはじまり

静岡県の焼津市で4年間修業をさせていただき、大阪万博の年(1970年)に、29歳で会社を立ち上げました。

当時は人もいない、信用もない、取引先もない、資金不足の中でのスタートでした。まだスーパーもあまりない時代、最初のお客様は、朝市(中洲陸橋、西駅一番街、滑川)あたり。「あんたげぇのつきあげは、売れんから、もうよかよ」なんて何度か言われましてね。当時を振り返ると、今こうして仕事を与えてもらえる喜び、ありがたさというのをしみじみと感じます。

厳しさは優しさ

立石食品を始めた頃は、まわりから「一則が続っもんか」と言われるのが悔しくて。その時は「ないごてそげなこつを言うとけ?」と思ったものです。でも、そんなふうに言ってもらったおかげで頑張りが効いたんです。

あたたかい慰めより厳しい苦言・忠告の方が頑張りにつながる。そして厳しさは優しさなんだと、40代・50代になった頃に気づくものです。今はありがたいことだったなぁと思っています。

先輩と同じ事をしていてもダメだ

その当時の同業の先輩方は老舗ばかりで、正直言ってうらやましいと思っていました。しかし、人と同じことをしていてもダメだと。だから、夜中に揚げて、揚げ立てを朝市に持っていって売りました。土日はいつもどこかのスーパーで実演販売をしていました。生協さんはじめ、いろいろなスーパーにフライヤーを持っていって、お客さんの目の前で揚げる眼天(丸天)は、飛ぶように売れました。

食品というものは、売れ残ると自分で引き上げないといけない。せっかく作ったものを引き上げるのも辛いこと。ではどうするか。20kgの注文に15kgしか持っていかないようにしたんですね。そうこうしているうちに、商品が完売するようになっていきました。

ピンチの裏にはチャンスが隠れている

40年ほどの会社の歴史の中では、大ピンチも何度かありました。
一号用地進出後、42歳の時でした。大きな取引のあった会社から、「よその会社にも納入するなら取引を止める。どちらを取るか返事をして欲しい」と言われたのです。どちらも大口の取引先でしたから悩みました。悩みに悩んだ結果、よその会社を選びました。売上額がいきなり減ったわけですから、金借りに奔走しなければなりませんでした。金融機関への返済も始まっていましたし。

でも取引を続けることにした方の会社が、噂を聞きつけて話しに来たのです。彼らは「私たちを選んだがために減った売り上げを、なんとか取り返しましょう」と言ってくれました。彼らのネットワークを使って、減った売り上げを半年でクリア。設備投資をしなければ製造が間に合わないほどになりました。

単純作業こそ難しい・つらい・きつい

社員には、「ひとつひとつの作業を、考えながらやりなさい」と言っています。単純作業こそ難しい。単純なほどきつい。そこをどう工夫するかということが大事です。

いいものはどんどんマネをしていけばいい。でも、マネをマネに終わらせず、自分のものにしていけるように研鑽していかなければなりません。

「食の安全・安心」と危機への対応

「疾風(しっぷう)に勁(けい)草(そう)を知る」という言葉があります。激しい風雪(不況)が吹いて、はじめて強い草と弱い草が見分けられるということです。昨今の食品偽装の問題を見ていて、この言葉を思い出しました。

起こってしまったことにどう対処するか。三重の赤福さんの対応は良かったと思います。謝るべきところは謝って隠さない。「食の安全・安心」と言われますが、「安全」は科学的に証明できる事実、「安心」はお客様との信頼関係であり感情的なものです。

危機的な状況が起こった時に、社員に責任を押しつけて逃げるなどもってのほかです。トップは他責にしてはならない。もし社員が行ったことだったとしても、その任命責任は社長にあるのですから。行動こそが真実です。

地域の中で生きる

企業にとっては、地域の中でどれほど認知されているかということが大切だと思っています。いきなり木を植えても根付かない。小さくても根を張っている盆栽のように、手間暇かけて根付かせていかなければならない。

一生懸命働いて、地域社会にお返ししていきたいと思っています。
そして、日々働いてくれている社員・パートさんに感謝しています。

                 
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